2016-12-09

ロックTと私。

ひところ、ロックTシャツが流行った時期がありました。

「RAMONES」「KISS」「THE ROLLING STONES」「IRON MADEN」などのTシャツがギャルブランドのショップで売られ、着てる人もいっぱいいました。最近落ち着きましたね。

でも、私は心の中で石を蹴っていました。絶対、KISSの曲なんて知らずに着てるよなあ、ラモーンズって読むこともできないんだろうなあ・・・・って。

なんかロックっぽい古着っぽいテイストが欲しいからというだけで着るなんて・・・ないわ~と。
意外と硬派な私。
そして女子にしては洋楽に造詣が深い私としては・・・。
自分にとってロックTは大切な自己主張。
着ているTシャツで「おっ、○○○○好きなんですか?」と声をかけてみたりするような、「あっ、意外と骨っぽい人なのかな」とか、その人を知るコミュニケーションツールの一つでもあるわけです。

だから、たとえスレイヤーのロゴTがハズシアイテムとしていけてたとしても、ベルベットアンダーグラウンドのバナナ柄(byアンディ・ウォーホール)のTシャツがおしゃれだったとしても「自分にとってこれはリアルなのか?」「それは自分のルーツなのか?そうじゃないなら、これは私が着るものではない」というルールを課しているのです。

自分のルーツとは:

それを聴いて感銘し、そのアーティストや周辺ジャンルを自ら掘った(研究した)か?影響を受けたか?

という自分なりの定義です。

そこに「昔の彼が好きでいっしょによく聴いてて~~」というのは含まれません。

以前ある現場でご一緒した方が、New Orderの「権力の美学」というアルバムの有名なバラの絵の描かれたジャケットがプリントされたTシャツを着てらして、「あ!!○○さんこのアルバムお好きなんですか?」と尋ねたところ「それ前も言われたけど、俺知らんねん・・・」と返されたときは割とショックでした。(良く解釈したらそれだけジャケットが単体でも素晴らしいってことですが)

まあ、ヒトはヒトってことで・・・。

いや、アホちゃうかと思われるのは承知で。
自分はTシャツに書かれてる内容にはこだわっていこうと。

内容が気に入ったら、それがしまむらであろうと流行じゃなかろうと愛し着続ける。

多様性を自認する私ですが、これはずっとキープしています。

で、そんなもんだから、プリントTシャツが欲しいなと思い立ってから手に入れるまで時間がかかる。
英語じゃない場合は「これなんていう意味なんですか?」と店員に聞き、うざがられています。
よくある「英語としてありえない」センテンスの書かれたTシャツはもちろん、意味を知った上で気に入らない場合はOUT。

これって、英文字に意味を求めず、なんか無地じゃない「オブジェクト」「にぎやかし」という認識であれば問題なかったんだと思います。

実はTシャツの話だけではなく、デザインしてても同じことがあったりします。
なんかスペースを補うためだけの英文字。それ自体に意味があってもなくても、「このあたりのスペースが寂しいからなんとかして」と英語でつらつら何か書いて欲しいとクライアントから言われることもあります。
そこを読むやつはいないだろうと。この意味がリアルじゃないと追求するやつもいないだろうと。外人はこれ見ないだろうと。

日本語で書いた文章を無料の翻訳サイトで英語にして、それがものすごく変な英文だったとしても平気でデザインに盛り込むデザイナーがわりと多いことを知っています。

それ絶対にしたくなくて。
言い回しがおかしくないか調べますし、長めのセンテンスを入れるときは翻訳さんに見てもらいます。
少なくとも自分の責任において入力する仕事であれば。

ところで、

こんな話を熱くアシスタントに語りながら(飲み屋二軒目みたいですねと言われながら・・・)

「そんな私が、あまりにも気に入っているけどルーツじゃないから着るのを諦めたロックTがあるねん」

と見せたのがこれ。

Sonic Youthのあまりにも有名な「Goo」というアルバムジャケットのイラストの描かれた名作T。

レイモンド・ペティボンというアーティストの作品なのですが

とにかくかっこいい!!

もちろんソニックユースのアルバム自体もかっこいいんですけど、このイラストがあまりにもマスターピースなので、アルバムジャケットとしてよりもTシャツ着用がいけてる(と自分勝手に思っている)!

がしかし、残念ながら「昔の彼が~~」ルールに抵触するため・・・・着ることはないのです。

そしてググった画像でAmazonで売ってたGooのTシャツを見ながら、ソニックユースの「ソ」の字も知らないアシスタント曰く

「あ、かわいい。もし私これ買って着てたらすみません☆」

ガクッ。

ルールのない世界はすぐ隣に存在していたのでした。

———————追記:

似た考え(というよりもっと風上にいる存在ですが)の記事を見つけましたので
リンクを貼ります。
スラッシャーのTシャツそういえば去年やたら街で見たもんなあ。
みんなスケーターじゃないだろうなあ。
ファッションブランドじゃないんだよと、記事では言っています。

FNMNL「Thrasherの編集長がスケーターアイテムを着るセレブを批判」
http://fnmnl.tv/2016/09/28/9859

 

ちなみにこの記事では、

「東京オリンピックでスケートが正式種目になったときも起こり、スケーターたちはスケートはスポーツではないとし、決定取り消しを求める署名活動を始めた。」

とありました。私も同感。スケートはカルチャーでありライフスタイルであり、
たしかにコンペティションもあるけれどオリンピックとかちょっと違うなあって。
彼らのワザのポイントは、「どんだけクレイジーか」ってとこで、
何回転とか着地がきれいとか、そういうことじゃないと思います。
だから、褒め言葉は「きれいに決まった!」というより「アホや!!」な気がします。

———————さらに追記:

2018年2月
ピョンチャン五輪のスノボ競技を見ていて心から思いました。
解説者の中井さんが口にするのは、
「おしゃれですねー」
「かっこいいですねー」
「シブいです」
「スタイル入ってます」
「大げさに喜ばないところがスノーボーダーらしいです」
これ、さきほどの追記と全く同じ話なんです。
着地が決まるとか、何回転したとかももちろん採点対象の話なんですけど、
「他の人がやってないことをやる」「自分のスタイル」ってことが
いかに大事か、またそれをきちんとクリアーにこなす人は「リスペクト」する。
中井さんにしても、プレイヤーの平野歩夢くんにしても、対抗することより
リスペクトし合いながらそれぞれが自分の持ってる技を極めることを
心から楽しんでいる、そんな印象を受けました。
競技だから勝ち負けもあるけど、競い合う喜びに満ちてました。
それを見て、何か幸せな気持ちに。
中井さんの解説がいい、とTwitterでもものすごく話題になっていて、
このカルチャーのニュアンスがみんなに伝わってるんだ、と嬉しく思います。

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